数ある革専門店の中から、ユウナギのページをご覧いただきありがとうございます。店主の田中です。
革工房ユウナギは、福岡県福津市にあります「西福間海岸」の海よりその名を拝借した革工房です。
数年前、この海に心を救われたこと、黄昏どきのやさしい夕凪の美しさから、この革工房ユウナギという名称に決めました。
なめらかで控えめに輝くこの水面をイメージしながら作品をつくっています。
クロムなめし革(化学なめし)、合成皮革は一切使わず、
植物タンニンなめしのひとにも自然にもやさしい天然皮革のみを用いています。
工房をはじめたきっかけ
父と祖父
元々革製品は好きでしたが、性質的に不器用で、まさか自分がものづくりに携わるなんて思ってもいませんでした。
2017年に北九州市の革靴職人さんとカメラ用のストラップをつくるワークショップを開き「自分でもお客さんに教えられるようになるといいなあ」と思いながら、少しずつ革細工をはじめます。
不思議なことに、他の工作はまるでうまくできないのに革だけはうまくいくー。
よく理由もわからないまま、趣味の一環として革細工を続けていました。
ある日父から「お前が生まれる前、祖父が北九州市若松区で革靴店を営んでいた」との話を聞きます。
得てして妙な感覚でした。
「革のこと、じいちゃんに色々聞きたかったなあ」と常々思いますが、それはもう叶いません。
祖父はぼくが大学生のときに他界したからです。
それでも、祖父の血が脈々とこの手先に流れていると考えるとなんだか満たされた気持ちになります。
その血に恥じない作品づくりをしていきたいなと思うばかりです。
革と広告
店主 田中
ぼくのことを知ってくださっている方はもうご存知だと思いますが、革工房ユウナギ一本で生活をしているわけではありません。
コピーライター/プランナーの肩書で、今も広告事業を営んでいます。つまりは革と広告の両輪です。
革一本で食べている本懐の革職人さんに技術面で勝てるは思っていません。
ひとつのことに集中し、常日頃研鑽をしている方よりも何かがうまくできるほど世の中甘くないと思っています。
ただ、広告の仕事をしている特性上、人の話を聞いて、それを何かしらの目的に合わせて表現するというサイクルは今も現役でやっていますし、これは職人さんにはなかなかできない芸当だという自負もあります。
性格的に、誰が買ってくれるかもわからない商品を闇雲に作るのは性分に合いません。
広告のスキルを活かし、なにかできないかと考えた末に「オーダーメイドの革工房」というスタンスに辿りつきました。
オーダーメイドについて
革工房ユウナギでは、製作の9割以上がオーダーメイド品です。
ありがたいことに、ホームページやSNS、イベント出展時などに多数の注文を頂いています。
その人の考え方、雰囲気、要望を聞いて、なるべく近い形に仕上げる。
簡単そうですが、未だにオーダーメイドはむずかしいなと思うことが多々あります。
その分、やりがいもあるように感じます。
オーダーメイドについて簡単にまとめたページがあります。興味がある方はご覧ください。
・オーダーメイドについて
https://yunagi.theshop.jp/blog/2021/05/18/230953
傷のない人生なんて。
生きていると、思いもしないつらいことや悲しいことが起きますよね。
不幸自慢をするつもりはありませんが、ぼくも幾度かそういう経験をしてきました。
特にこの国は、人のミスや失敗に厳しい風潮にあると感じています。
100%の働く時間があったとして、99%はうまく仕事をしているのに、失敗した1%を入念に詰める。
その行為が何を生み出すのか、ぼくには理解できません。
人は失敗もするしミスもするし傷つくものだし傷つける生き物だと思っています。完璧なひとなんて見たことありません。
傷つくから人にやさしくできるし、人の痛みがわかるものだと思います。
ミスを活かして何かを生み出せるのは、人の大きな特徴だと思っています。人工知能の深度学習は正解への最短距離を突き詰めたもの。失敗は癌であり、そこからクリエイティブな何かを生み出すことはありません。これが機械の限界。
人は失敗やイレギュラーからイノベーションを起こすこともできます。ミスを笑い、活力にすることだってできる。
革工房ユウナギで扱う天然皮革も、どこかそれに似ています。
自然なものだからこそ、虫食いのあと、シワ、シミ、傷など、その個体の生き様が刻まれています。
これら商品は、一般的に考えれば検品されB級品扱いとなることでしょう。
でもユウナギは、そのように考えません。
個体独自のシワやシミ、傷も立派なデザインです。
いくらお金を積まれても、時間をいくらかけても再現できない尊いもの。
決定的に商品の外観や機能を損ねるものはもちろん使いませんが、こういった生命だからこその特徴は積極的に活かして行きたいと考えています。
来店について
工房への来店はもちろん大歓迎です。ただ、先に書いたとおり広告業で出払うことが多いため来店は完全予約制とさせていただいています。
お電話やSNS、問い合わせフォームなどもありますので、お好きな方法でお問い合わせいただけるとありがたいです。
稀に「いま工房に来ているのですが今からいけますか?」といった問い合わせをいただきますが、基本的に対応できないと思ってください。ご面倒をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。